Miki
心配症と認知療法
▶︎ 心配と心配り
不健全な「心配」と、健全な「心配り」の違いを知りましょう✨ 最悪な事態を予測して、心配に心配を重ねて、何も手のつかないような状態になるのは、時間とエネルギーのムダです。 子どものときに、いちばん怖れていたこと、心配していたことが本当に起こったりしたのかもしれませんね。
心配して、オロオロして過ごす状態が何回も繰り返されるうちに、それが普通のことになってしまいます。
いつもいつも最悪の事態を想像して、動きがとれなくなってしまうのです。 何の行動もとらないで心配を重ねるのは、「不健全な心配」です。
健全な心配りは、何かが起こったときに感じることを感じ、
自分と相手に心配りをし、やさしい言葉をかけ、力づけたりサポートしたりします。
そして、次にどうしたらいいかを考え、問題解決へと行動に移していきます。 健全な心配りと、不健全な心配との違いを知り、健全な心配りができるよう練習しましょう。

▶︎ 悩みは「想像」か?「現実」か?
今、悩んでいる方にとっては、どうしようもないほど、解決しようがないほどに困っておいでのことかとお察しします。
人が抱え込んでいる「悩みのタネ」というのは、単純ではないですよね。
非常に複雑で、自身以外の人物たちの協力も必要なんだけど、何かかが理由でそれも実行できない…。代替法を考案したいけど、やっぱりどこかでムリが出てきてしまう。
そして、八方塞がりになって逃げることもできずに刻ばかりが進んで…と、いうことが多いようです。
そこで大切なのは、抱えている問題がどこまで事実的問題で、どこからが想像的問題(心配)なのか。これらを大別する必要があります。
▶︎ 想像的な問題の解決方法とは
不安障害などとざっくりした病名を付けられている方も多いかもしれませんが、俗にいう「心配症」が過ぎる人たちに多い問題です。
心配症な方々は、本当に繊細であり、いろんなことに神経を使っていらっしゃいます。
そういう意味ではHSPタイプの「繊細さん」も当てはまるわけです。
さて、こう言った何かと心配しては未来を悲観視してしまう癖がついた方々をカウンセリング でどのように修正していけるのかについて簡単にご紹介したいと思います。
まず、大前提ですが、まだ起きていないことに対して「〜なるんじゃないか」と予測したことが現実化する確率をご存知でしょうか。
実は、99%外れると言われています。
内容にもよるかもしれませんが、不安や心配の99%は余計なストレスでしかないということを知ってもらいたいです。

▶︎ 事例で学ぼう
次の心配症なかたの事例を見て考えましょう。
例
毎朝、出勤する時に顔を合わせるご近所さんがいる。

ある日、いつも通り顔を合わせたので、「ぉはようございまーす」と普段通りに挨拶したんですが、その方は顔を背けるようにして返事もしてくれなかったんです。
その時は、「あれ?」と思ったけど出勤しないといけないため、やり過ごしたんですが…。どうにもその出来事が、頭から離れず。
「なんか嫌われるようなことをしたかな…」とか、「近所で悪い評判が…?」などと、考えはじめ、ソワソワして仕事にも集中できなくなってしまいました。
ーーと、いう相談があったとします。
上述をもとに整理すると・・・
A 出来事(きっかけ)
ある日、いつも通り顔を合わせ普段通りに挨拶したが、その方は顔を背けるようにして返事もしてくれなかった。
⬇️
B 認知(受け止めかた)
「なんか嫌われるようなことをしたかな…」、「近所で悪い評判が…?」など考えた。
⬇️
C 結果(体の反応)
ソワソワして仕事にも集中できなくなった。
A「出来事」というのは、誰が見ても不変である客観的事実ですが、B「認知」に関しては人それぞれで異なっていて、その人の特性が強く現れています。その特性や傾向によってC「結果」が異なってくるというのが「ABC理論」という認知行動モデルです。
Bに関しては、人それぞれなので相談者のように「嫌われてしまった」と考える人もいれば、そう考えない人もいるわけです。
では、相談者のようには考えない「楽天家」な人だったら、どのように受け止められるのか検証しましょう。
A 出来事(きっかけ)
ある日、いつも通り顔を合わせ普段通りに挨拶したが、その方は顔を背けるようにして返事もしてくれなかった。
⬇️
B 認知(受け止めかた)
「なにか忙しかったんだろうか」、「何かアッチにあったのかな?」と考えた。
⬇️
C 結果(体の反応)
気に留めることもなく、普段通りの1日だった。
このように同じ体験をしても、受け止めかた(認知)のあり方ひとつで、結果が変わることを応用して、心配症な方たちの「認知」を修正するのがカウンセリングです。
▶︎ 認知修正
では、相談者の認知“「なんか嫌われるようなことをしたかな…」、「近所で悪い評判が…?」など考えた。”ことが、もっともであると思える理由を聞いてみましょう。
相談者は「そのご近所さんは、地区のボス的な存在で、あの人に嫌われたら大変なことになる」、「あの人が悪い評判を広げていたら、今の家にはもう住めなくなる」など話してくれ他とします。
どうやら、そのご近所さんは周辺住民にとって重要なキーパーソンであると知っていたからこそ、この事件を脅威に感じて心配が止まらなくなってしまったのが背景にあるようです。
しかし、「なにか嫌われるようなことをした」という事実や「近所で悪い評判が立つ」ような事実があった自覚は全くないようです。
この事例の相談者は、事実無根な想像で心配を重ねて、あたかもその想像が真実であるかのように錯覚してしまい、想像だけで問題が大きくなってソワソワしていたんです。
そこで、相談者の認知が「間違っている」と思える部分を協働で探しだします。
例えば、「そっぽを向いた」のは「嫌われたから」ではなく、誰かに呼ばれたり、虫がいたとか、アッチに注意を向ける必要があったのかも…といった対象者側の理由を推測して反証します。
また、「楽天家」さんのように「そのとき、たまたま忙しかっただけ」だったり、「単に声が届いていなかった?」などの視点も役に立つでしょう。
さらに「一度挨拶が返ってこなかったからといって、それが嫌われているという根拠にはならず、「嫌われた」とする結論は飛躍しすぎている」などと裁判のように否決することもできます。
相談者が自分の認知(受け止めかた)に偏りがあったと気づくまで延々とこの作業を繰り返します。
結果・・・
A 出来事(きっかけ)
ある日、いつも通り顔を合わせ普段通りに挨拶したが、その方は顔を背けるようにして返事もしてくれなかった。
⬇️
B’ 修正認知(受け止めかた)
「あれ?機嫌悪いのかな?」、「アッチに何かあったのかな」
⬇️
C’ 修正結果(体の反応)
「明日聞けばいいや」と、気に留めない
・・・のように変容しました。
「嫌われた」と考えると脅威を感じてソワソワしていたことでも、視点を変えることで少なくとも「ソワソワ」がなくなり、普段と変わりない1日が過ごせそうですよね。
▶︎ おわりに
このような訓練を認知療法と呼びますが、出来事に対して自然と浮かび上がる認知(自動思考という)自体を完全にコントロールすることは困難です。
しかし、自身の傾向をしっかり把握することや対策を習得することは簡単です。
自分一人で取り組む事も大切ですが、無意識の認知を扱いますので専門家と一緒に取り組んだ方が安全にトライできると思います。